第59回全国俳句大会 ジュニアの部

【大会賞】(学年順)

しんぞうをドンと花火がおしてくる
 岩手県 北上市立黒沢尻西小学校 小2 栩原千佳

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「しんぞう」を「おしてくる」という思い切った言い表し方にびっくりしました。体の中にまで響いてくる花火の音の大きさが伝わってきます。そして待ちに待った花火に「しんぞう」がどきどきする様子も想像できます。(選評=望月周)
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水温む振つて乾かすたなごころ
 長崎県 長崎大学教育学部附属中学校 中1 中村奈央

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多分クラブ活動などで汚れた手を水道の水で洗ったのだろう。いつもならポケットに入れているはずのハンカチがない。作者は咄嗟に手を振って風に乾かそうとしたのだ。「振って乾かす」という動作がリアル。季語の「水温む」もさりげなく効いていて上手い。(選評=菊田一平)
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制服の採寸はじまり春きざす
 宮城県 仙台市立郡山中学校 中3 相澤梨杏

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制服の採寸のはじまりに、進学による新たな生活への想いを重ね、「春きざす」の季語が効果的に使われた。希望のあふれる一句と思う。(選評=長嶺千晶)
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止まりつつ羽根現るる扇風機
 愛知県 名古屋高等学校 高2 篠原圭太

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電源を切られた扇風機の羽が回転速度を落として脱力してくると、ふっと羽の形状が立ち現れてくるときがある。作者はその瞬間を見逃さず、よく言語化された。観察眼の効いた作品だ。(選評=鎌田俊)
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この頃は山椒魚になった様
 東京都 学習院女子高等科 高3 青柳共香

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緊急事態宣言のもと休校が長引き家に籠ったままの「この頃」である。ふと井伏鱒二の小説の山椒魚のことが思われた。岩屋から出てこられなくなった山椒魚の孤独にわが身を重ねていて深い。(選評=松岡隆子)
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未記入の進路希望や昼の月
 東京都 学習院女子高等科 高3 村上理穂

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人生には自分自身で決定しなければならない大事が何度かある。作品の月が皓皓とした満月ではなく、ぼんやりとした昼月であることが決定しかねている心情を表して深い。思慮深い作者であればこその歩みに希望がある(選評=すずき巴里)
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【優秀賞】
うみのみずつかいほうだいみずでっぽう
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 日沼依知海

つばめのすすんでみたいなたのしそう
 東京都 江東区立水神小学校 小2 水主村一輝

ぬいぐるみぎゅっとまふゆのお友だち
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 田畑陽色

年の豆おにがヘディングしてとばす
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 磯田七海

春よこいかけ算九九もだいじょうぶ
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 相生花

けしきごとブランコゆらしなかなおり
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小4 勝山光

ランドセル一年生をせおってる
 富山県 氷見市立朝日丘小学校 小4 深井和花子

子つばめもいっしょに校歌歌ってる
 兵庫県 神戸市立井吹東小学校 小4 吉田彩音

いちごのすっぱさ学校は閉じたまま
 富山県 氷見市立窪小学校 小5 大森桜歩

たんぽぽの黄色友達まだいない
 富山県 高岡市立伏木小学校 小6 春日華

舟虫や大図かんめく海の岩
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小6 嶋田暖人

たけのこに負けずにぼくものびていく
 大阪府 岬町立淡輪小学校 小6 松永立矩也

ランドセルもうすぐふくよ春の風
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 三嶋葵

先生もろう下を走る卒業期
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 田島圭悟

波音をじしゃくにひかれゆく真夏
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小6 金平喜一

ノート十冊使い終わって進級す
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 渡辺桃乃

卒業す交換日記は書きかけで
 東京都 学習院女子中等科 中1 町田珠理

氷菓食う涙のような味もする
 東京都 江東区立深川第七中学校 中1 山野井智子

歩いてる水無月僕は歩いてる
 東京都 江東区立深川第七中学校 中2 落合令文

抜けだせぬ淵にはまった花筏
 東京都 学習院女子中等科 中3 五十嵐咲

紋白蝶雨にうたれてなおも飛ぶ
 東京都 学習院女子中等科 中3 久保田桜子

長閑かなアンパンマンのえかきうた
 東京都 学習院女子中等科 中3 青木茉莉

風光るセーラー服を躍らせて
 東京都 学習院女子中等科 中3 門倉咲綺

花曇り計算だけの解答欄
 長野県 泰阜村立泰阜中学校 中3 中島ほのか

透けてゐる餃子の餡や年忘
 愛媛県 愛光高等学校 高1 三神沙生

憂鬱な私を笑うソーダ水
 東京都 学習院女子高等科 高1 中井美咲希

妹がおばの真似してサングラス
 東京都 学習院女子高等科 高1 和田優理耶

部活後の汗の匂いも思い出に
 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 迫田琉雅

風鈴が鳴る惑星が生まれおる
 奈良県 西大和学園高等学校 高2 上原優真

青葉風ばあばを祖母と言ひなほす
 愛知県 名古屋高等学校 高2 篠原圭太

春惜しむコルクボードは穴だらけ
 長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 トレス華

菜の花や画帳に影を描き足しぬ
 愛知県 名古屋高等学校 高3 鬼頭孝幸

ステイホーム静かにどこかで桜散る
 東京都 学習院女子高等科 高3 岩橋芽愛

ウイルス対人間たちの春の闇
 東京都 学習院女子高等科 高3 山下朋子

夏は来るこの曲に聴き飽きた頃
 東京都 学習院女子高等科 高3 石垣すず

七変化有為転変に揺れもせず
 東京都 学習院女子高等科 高3 林奈緒子

【学校賞】

◆小学校◆
秋田県 八峰町立峰浜小学校
東京都 江東区立第六砂町小学校
東京都 日野市立南平小学校
富山県 高岡市立伏木小学校

◆中学校◆
東京都 江東区立深川第七中学校
東京都 学習院女子中等科
鹿児島県 霧島市立舞鶴中学校

◆高等学校◆
東京都 学習院女子高等科
長崎県 長崎県立大村高等学校

【奨励賞】

◆小学校◆
長野県 須坂市立豊洲小学校
東京都 江東区立水神小学校
佐賀県 唐津市立北波多小学校
長崎県 長崎市立小榊小学校

◆中学校◆
神奈川県 横須賀市立長井中学校
静岡県 静岡県西遠女子学園
奈良県 五條市立五條東中学校

◆高等学校◆
東京都 東京都立江戸川高等学校
石川県 石川県立金沢錦丘高等学校
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校

【選者特選・入選】

鎌田俊 選

◎特選
波音をじしゃくにひかれゆく真夏
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小6 金平喜一
紋白蝶雨にうたれてなおも飛ぶ
 東京都 学習院女子中等科 中3 久保田桜子
花曇り計算だけの解答欄
 長野県 泰阜村立泰阜中学校 中3 中島ほのか
止まりつつ羽根現るる扇風機
 愛知県 名古屋高等学校 高2 篠原圭太
未記入の進路希望や昼の月
 東京都 学習院女子高等科 高3 村上理穂

◎入選
兄ちゃんが生まれたバレンタインの日
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 市村埜々華
大寒やまがおでニュース見てるママ
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小4 斎藤優至
いちごのすっぱさ学校は閉じたまま
 富山県 氷見市立窪小学校 小5 大森桜歩
かみを切り頭に寒さからみつく
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小6 藤田万央
ゆきだるま一つ作ってまた一つ
 大分県 大分市立明治小学校 小6 長野友軌
いちょうの葉散る十秒の旅に出る
 大分県 大分市立明治小学校 小6 羽田野雄大
水温む振つて乾かすたなごころ
 長崎県 長崎大学教育学部附属中学校 中1 中村奈央
制服の採寸はじまり春きざす
 宮城県 仙台市立郡山中学校 中3 相澤梨杏
若葉負い待ち人男坂きたる
 東京都 学習院女子中等科 中3 田中茉莉
透けてゐる餃子の餡や年忘
 愛媛県 愛光高等学校 高1 三神沙生
花霞明日も会える気がしてて
 東京都 学習院女子高等科 高2 石川舞
前髪を切りて見える夏の海
 東京都 学習院女子高等科 高2 辰澤奈緒子
桜もちきみが無事ならそれでいい
 東京都 学習院女子高等科 高3 仙田梨紗
春惜しむコルクボードは穴だらけ
 長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 トレス華
炎昼やコートに響く打球音
 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高3 勝目星矢

菊田一平 選

◎特選
うみのみずつかいほうだいみずでっぽう
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 日沼依知海
舟虫や大図かんめく海の岩
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小6 嶋田暖人
水温む振つて乾かすたなごころ
 長崎県 長崎大学教育学部附属中学校 中1 中村奈央
妹がおばの真似してサングラス
 東京都 学習院女子高等科 高1 和田優理耶
青葉風ばあばを祖母と言ひなほす
 愛知県 名古屋高等学校 高2 篠原圭太
◎入選
つばめのすすんでみたいなたのしそう
 東京都 江東区立水神小学校 小2 水主村一輝
ぬいぐるみぎゅっとまふゆのお友だち
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 田畑陽色
おなかまでこたつにもぐる日よう日
 富山県 高岡市立伏木小学校 小3 髙﨑颯佑
たんぽぽにちょうちょがたくさんあいにきた
 群馬県 館林市立第二小学校 小4 おかだまお
もも色の雨がふってる春の暮
 長崎県 長崎市立小榊小学校 小6 加藤聡真
ばらの花開き始める時が好き
 愛知県 南山大学附属小学校 小6 前田珠希
あとちょっとだけが口ぐせ春休み
 富山県 高岡市立伏木小学校 小6 鶴谷和奈
風鈴が教えてくれる風の声
 東京都 江東区立水神小学校 小6 小林龍生
おそろいの色のふくきてあじさいは
 鹿児島県 伊佐市立湯之尾小学校 小6 瀬戸鉄平
涼しげに弾ける音の炭酸水
 東京都 学習院女子中等科 中2 甲斐夏実
制服の採寸はじまり春きざす
 宮城県 仙台市立郡山中学校 中3 相澤梨杏
長閑かなアンパンマンのえかきうた
 東京都 学習院女子中等科 中3 青木茉莉
自転車のペダルに夏の海の風
 東京都 学習院女子高等科 高1 樋口佳那
もう少し春を遊んでいたかった
 東京都 学習院女子高等科 高2 花房万里恵
読みかけのページをめくるシクラメン
 東京都 学習院女子高等科 高2 青木麻郁

すずき巴里 選

◎特選
春よこいかけ算九九もだいじょうぶ
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 相生花
ノート十冊使い終わって進級す
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 渡辺桃乃
風光るセーラー服を躍らせて
 東京都 学習院女子中等科 中3 門倉咲綺
憂鬱な私を笑うソーダ水
 東京都 学習院女子高等科 高1 中井美咲希
未記入の進路希望や昼の月
 東京都 学習院女子高等科 高3 村上理穂

◎入選
こいのぼりおとうとのためおよいでる
 岐阜県 大垣市立静里小学校 小2 山中はな
かきごおりたべ父のふねよく見える
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 三浦伶煌
ランドセル一年生をせおってる
 富山県 氷見市立朝日丘小学校 小4 深井和花子
びしょぬれだじいちゃんとわらう雪合戦
 富山県 高岡市立伏木小学校 小5 浦彩華
雪がふる少し小さい雪だるま
 富山県 高岡市立伏木小学校 小5 海津優
たんぽぽの綿毛はいつも長い旅
 東京都 日野市立南平小学校 小6 山野智行
リーダーとしての六年四月来る
 富山県 高岡市立伏木小学校 小6 大島碧暖
先生がさくらと待っている玄関
 富山県 高岡市立伏木小学校 小6 大門優奈
水温む振つて乾かすたなごころ
 長崎県 長崎大学教育学部附属中学校 中1 中村奈央
氷菓食う涙のような味もする
 東京都 江東区立深川第七中学校 中1 山野井智子
春風に背中を押され門潜る
 東京都 学習院女子中等科 中1 加藤緑
卒業だ最後のチャイムが鳴り終わる
 鹿児島県 霧島市立舞鶴中学校 中1 吉田煌誠
部活後の汗の匂いも思い出に
 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 迫田琉雅
この頃は山椒魚になった様
 東京都 学習院女子高等科 高2 青柳共香
押してくる四月の風が前向けと
 長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 中嶋佳慈

長嶺千晶 選

◎特選
けしきごとブランコゆらしなかなおり
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小4 勝山光
制服の採寸はじまり春きざす
 宮城県 仙台市立郡山中学校 中3 相澤梨杏
抜けだせぬ淵にはまった花筏
 東京都 学習院女子中等科 中3 五十嵐咲
ステイホーム静かにどこかで桜散る
 東京都 学習院女子高等科 高3 岩橋芽愛
ウイルス対人間たちの春の闇
 東京都 学習院女子高等科 高3 山下朋子

◎入選
しんぞうをドンと花火がおしてくる
 岩手県 北上市立黒沢尻西小学校 小2 栩原千佳
ぬいぐるみぎゅっとまふゆのお友だち
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 田畑陽色
年の豆おにがヘディングしてとばす
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 磯田七海
春やさいぼくには少しにがい味
 長野県 須坂市立豊洲小学校 小3 金い力
おつかいにひとりで行って寒たまご
 岐阜県 大垣市立墨俣小学校 小3 沖田竜之介
卒業す交換日記は書きかけで
 東京都 学習院女子中等科 中1 町田珠理
静けさにため息ひとつ春の宵
 東京都 学習院女子中等科 中1 進士凛々香
距離縮む君と私の雪合戦
 神奈川県 横須賀市立長井中学校 中2 阿部有未
日の入りや静止画のごと春の海
 東京都 学習院女子中等科 中3 小林あさ陽
終わらない課題の量に花曇り
 東京都 学習院女子中等科 中3 熊崎莉紗子
洗礼を終へて枯野を踏みし足
 愛媛県 愛光高等学校 高1 三神沙生
入学のこわばる顔も画面越し
 東京都 学習院女子高等科 高1 大森万由
芝の上てんとう虫のあかい点
 東京都 学習院女子高等科 高1 今井萌
髪束ね制汗剤のミント香る
 東京都 学習院女子高等科 高2 川上直子
菜の花や画帳に影を描き足しぬ
 愛知県 名古屋高等学校 高3 鬼頭孝幸

松岡隆子 選

◎特選
ランドセルもうすぐふくよ春の風
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 三嶋葵
先生もろう下を走る卒業期
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 田島圭悟
歩いてる水無月僕は歩いてる
 東京都 江東区立深川第七中学校 中2 落合令文
この頃は山椒魚になった様
 東京都 学習院女子高等科 高2 青柳共香
七変化有為転変に揺れもせず
 東京都 学習院女子高等科 高3 林奈緒子

◎入選
くさのなかめだけみえてるあまがえる
 広島県 安田小学校 小1 松尾優賢
ぬいぐるみぎゅっとまふゆのお友だち
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 田畑陽色
年の豆おにがヘディングしてとばす
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 磯田七海
かんぺきに九九よみあげて進きゅうす
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 筏結佳子
おにやらい父さんおめん外れてた
 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 渡邉穂佳
ランドセル一年生をせおってる
 富山県 氷見市立朝日丘小学校 小4 深井和花子
水温む振つて乾かすたなごころ
 長崎県 長崎大学教育学部附属中学校 中1 中村奈央
卒業す交換日記は書きかけで
 東京都 学習院女子中等科 中1 町田珠理
トス上げて雲のはしから夏の風
 東京都 学習院女子中等科 中1 田中希心友
長閑かなアンパンマンのえかきうた
 東京都 学習院女子中等科 中3 青木茉莉
透けてゐる餃子の餡や年忘
 愛媛県 愛光高等学校 高1 三神沙生
鴉の子羽傷つけて孵りけり
 岐阜県 岐阜県大垣北高等学校 高1 岸快晴
止まりつつ羽根現るる扇風機
 愛知県 名古屋高等学校 高2 篠原圭太
ステイホーム静かにどこかで桜散る
 東京都 学習院女子高等科 高3 岩橋芽愛
ウイルス対人間たちの春の闇
 東京都 学習院女子高等科 高3 山下朋子

望月周 選

◎特選
しんぞうをドンと花火がおしてくる
 岩手県 北上市立黒沢尻西小学校 小2 栩原千佳
たけのこに負けずにぼくものびていく
 大阪府 岬町立淡輪小学校 小6 松永立矩也
止まりつつ羽根現るる扇風機
 愛知県 名古屋高等学校 高2 篠原圭太
春惜しむコルクボードは穴だらけ
 長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 トレス華
夏は来るこの曲に聴き飽きた頃
 東京都 学習院女子高等科 高3 石垣すず

◎入選
子つばめもいっしょに校歌歌ってる
 兵庫県 神戸市立井吹東小学校 小4 吉田彩音
台風のはじっこが来たぬるい風
 静岡県 湖西市立新居小学校 小4 渡辺幸
いちごのすっぱさ学校は閉じたまま
 富山県 氷見市立窪小学校 小5 大森桜歩
マスクでもいもうと入学うれしそう
 東京都 日野市立南平小学校 小5 須藤然
たんぽぽの黄色友達まだいない
 富山県 高岡市立伏木小学校 小6 春日華
青い空てんとう虫が横切った
 長野県 須坂市立豊洲小学校 小6 関﨑悠
ひょっこりと生えた土筆と笑いあう
 東京都 日野市立南平小学校 小6 川野詩葉
お年玉もらって顔が太陽に
 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小6 須藤こなつ
引っこしたあの子に届け祭笛
 兵庫県 神戸市立井吹東小学校 小6 吉田友菜
たんぽぽのわたげ明るい未来へと
 東京都 学習院女子中等科 中1 井上舞衣
春休み母のピアノで目が覚める
 東京都 学習院女子中等科 中3 熊田菜々子
天高し弾丸サーブと対戦す
 静岡県 西遠女子学園 中3 岡本紗和
春時雨白きチョークの一欠片
 長崎県 長崎県立大村高等学校 高1 永田涼馬
風鈴が鳴る惑星が生まれおる
 奈良県 西大和学園高等学校 高2 上原優真
春の星家族と見れば輝くよ
 長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 谷口若菜


【選考経過と選を終えて】

◆選考経過◆ 全国俳句大会委員長 小島健

 「ジュニアの部」は本大会が十回目となります。今年はコロナ禍の影響で昨年の四〇%弱に応募数が減りましたが、全国の小学校・中学校・高等学校の学校単位、あるいは生徒さん個人から八、九〇〇余句が寄せられました。(内訳は小学校一五四校一、九四四名、中学校四八校一、六六〇名、高等学校四三校一、九四三名、合わせて二四五校五、五四七名、および幼稚園児二名です。) この全作品を次の選考委委員六名によって、先ず予選を行い、通過作品八一五句を得ました。

◆選を終えて◆ 長嶺千晶

 今年は初めて、コロナ・ウイルス禍中での選考だったので、応募総数は前年の三分の一にとどまったが、予選通過率は九パーセント強となり、昨年の六パーセント弱をはるかに上回る結果となった。つまり、質的には素晴らしい作品の応募が多かったということだったと思われる。各委員からも小学校、中学校、高校のそれぞれの作品に生徒たちの成長の段階が感じられ、充実していたとの感想が寄せられた。
 今回はその傾向を踏まえて、学校賞及び奨励賞は、応募数だけでなく、予選通過率も重視して選考の基準とした。質的にもよい作品を数多く輩出している学校を賞の対象としたのである。
 また、今年の特記すべき作品の傾向は、この未曾有のコロナ禍をどのように自分が捉え、過ごそうとしているのかという一人ひとりの真摯な想いの発露があったことである。その結果、類想感のある句が影をひそめ、このコロナ禍への嘆きや憤りを句作することによって、さらに乗り越えていこうとする、詩としての俳句の在り方を見出すことをできた。
 大会賞のみならず、優秀賞の作品に対しても各委員の評価は高かったと思われる。
 一例をあげると、小学生の部の、〈ランドセルもうすぐふくよ春の風〉では、入学式を前に一斉に登校のできない状況でも新一年生を思いやる気持ちが感じられ、〈舟虫や大図かんめく海の岩〉〈うみのみずつかいほうだいみすでっぽう〉〈年の豆おにがヘディングしてとばす〉などには、子供らしさの独自の表現にハッとさせられ、大人が忘れかけていた生活の実感が詠まれているとの評価があった。
 中学生の部では、〈長閑かなアンパンマンのえかきうた〉にこのコロナ渦中で平和な子供の世界への皮肉ともみえる微妙な心理があるとの発言があった。 高校生の部では、〈妹がおばの真似してサングラス〉にサガンの小説を思わせるような文学性が感じられ、他にも小説の影響などが独自に咀嚼されており、高校生ではすでに大人に近い感性が育っていることが諾えるとの発言があった。また、〈花曇り計算だけの解答欄〉から今の教育の在り方への批判を突き付けられた気がしたというある委員の感想も述べられた。
 例年とは違うコロナ禍という状況だったからこそ、本来の趣旨である、自分の想いを自分の言葉で表現しようとする句作の原点に立ち返ったことに気づかされ、感慨深い選考会となった。