第58回全国俳句大会 ジュニアの部
【大会賞】(学年順)
母に背を向けて見ている朧月
東京都 江東区立越中島小学校 小6 南波里葉
*+*+*+*
「母に背を向けて」に作者の強い意志が感じられます。多分母との間に意見の衝突があったのでしょう。けれども季語は「朧月」。作者の頑なさはすでに氷解しているのです。(選評=菊田一平)
*+*+*+*
教科書の表紙の固き四月かな
東京都 学習院女子中等科 中2 熊田菜々子
*+*+*+*
「表紙の固き」の描写力で、教科書の新しさが見事に表現された。さらに季語を「四月」とした工夫から、新生活を迎えた期待感、緊張感もまた「固き」の語で暗示されている。(選評=長嶺千晶)
*+*+*+*
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
*+*+*+*
静かな冬の朝、長編の物語を読み終えた。「蓋」ということばから、重厚な本であることが伝わってくる。「蓋」をする物もさまざまある。菓子箱、宝箱、棺、骨壺など。一冊の物語が辿るシーンに想像が及ぶ。( 選評=鎌田俊)
*+*+*+*
夜光虫海の中にも銀河系
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 倉林佳史
*+*+*+*
青白い光を放ちながら、波間に浮遊している夜光虫は幻想的で美しい。きっと波の音は涼しげで、空には満天の星が輝いているのであろう。銀河系に及ぶ少年の感覚は澄み切っていて瑞々しい。(選評=森岡正作)
*+*+*+*
八月の一人もいない歩道橋
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 関根晴子
*+*+*+*
立秋後も厳しい暑さが続く八月、炎天下の歩道橋は人影一つなく深閑としている。それは戦争や原爆で失われた多くの命の証のように思える。過ちを繰り返してはならないと静かに訴えている。(選評=松岡隆子)
*+*+*+*
ホイッスル鳴ったら終わる僕の夏
群馬県 渋川市立子持中学校 中3 横須賀勇汰
*+*+*+*
多分作者は中学の三年間をサッカーにかけて過ごしてきたのでしょう。それもこの夏の大会で終わり。夏雲の空に響き渡るホイッスルが聞こえて来そうです。 ( 選評=菊田一平)
*+*+*+*
紫陽花や付箋ばかりの単語帳
愛知県 名古屋高等学校 高1 本多元樹
*+*+*+*
梅雨の憂鬱な時期に、紫陽花は景色に彩りを添える。僕も電車通学のときに、英語や古文の単語帳を読んだことを思い出した。淡い色をした付箋の嵩は目をなごませると同時に、さしせまった試験の緊張を伝える。( 選評=鎌田俊)
*+*+*+*
イヤホンの片側はずす暮の春
東京都 学習院女子高等科 高1 角田葵
*+*+*+*
イヤホンをはずした方の耳には急にいろいろな音が聞こえてきて、それまで音楽を楽しんでいた独りの時間が断たれる。春の果てにも似た感覚。季語の「暮の春」が何気ない行為を詩にしている。(選評=松岡隆子)
*+*+*+*
剥製の虚ろなる目や桜桃忌
愛知県 名古屋高等学校 高2 鬼頭孝幸
*+*+*+*
太宰治が入水した忌日「桜桃忌」の配合により、硝子玉を嵌めた「虚ろなる目」という、まるで生命感の無い剥製を、太宰自身のアンニュイな「生」と重ね合わせている。( 選評=長嶺千晶)
*+*+*+*
微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
*+*+*+*
一生懸命数式を解いているのであろうか。「微分して微分して」のリズムが小気味良い。そこには弾ける若さがあり、夏はまさに君たちのものである。空の青、海の青、青春の青が眩しい。(選評=森岡正作)
*+*+*+*
【優秀賞】
はっぱのめうまれたばかりいいにおい
大分県 大分市立明野東小学校 小1 飯塚絃斗
たんぽぽがわたげになるよとりになる
東京都 江東区立越中島小学校 小2 やまもとみこ
ミニトマト小さな赤ちゃんみつけたよ
鹿児島県 霧島市立永水小学校 小2 四本陽愛
お寺から白いぞう出る花まつり
富山県 高岡市立伏木小学校 小3 田中優真
ビーチサンダル日やけのあとが人の字に
東京都 江東区立元加賀小学校 小3 あらいりこ
花いっぱいぼくがばあばのつえになる
兵庫県 神戸市立義務教育学校港島学園小学部 小3 菅真太朗
まんげつが子犬のようについてくる
東京都 目黒星美学園小学校 小5 平井美妃
百冊の本読みきって春の月
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 高橋幸太郎
春を待つもうすぐぼくは太こ隊
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 後藤槙吾
かめむしや自分のくささしらんかお
高知県 高知市立大津小学校 小5 福島彩乃
図書室のカーテンひらく木の芽どき
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 藤井光佑
つばめたちせいいっぱいな大人たち
東京都 暁星小学校 小6 田村 優有
図書室の少しさみしいあたたかさ
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 増田夏実
ふうせんを追ってもとどかぬ子どもたち
長崎県 長崎市立淵中学校 中1 鍵千咲姫
向日葵のまえ通るたび背伸びする
東京都 江東区立第二砂町中学校 中1 田口杏樹
醤油つくる人々の汗輝いて
東京都 慶應義塾中等部 中2 海野里奈
夏の星つなげてみたら母の顔
岡山県 山陽女子中学校 中2 西原海里
言いだせず線香花火消えてゆく
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 熊谷今日香
妹の宝の箱は海苔の缶
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 明日彩華
東京の海より青い夏の空
東京都 江東区立東陽中学校 中3 大池柚嬉
早春やガットの切れる音響く
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 古賀正太郎
炎天の百足競争みぎひだり
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 杉田隼人
天の川見ようと家族映る窓
長崎県 精道三川台高等学校 高1 栗野怜馬
切削油汗と混じってとんでゆく
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 西尾知真
刻銘碑なぞる手の皺沖縄忌
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校 高2 大城麻衣
じんわりと優しくなれる水羊羹
東京都 学習院女子高等科 高3 濵田真由美
「暑いね。」と髪を束ねて笑う君
長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 藤田彩花
Fコード弾けしギターや風光る
愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高3 丸山千尋
車窓から単語帳手に見る桜
東京都 学習院女子高等科 高3 平本瀬織
冬ざるるシベリア抑留者の名簿
徳島県 徳島県立富岡東高等学校 高3 松本彩音
【学校賞】
◆小学校◆
東京都 江東区立越中島小学校
富山県 高岡市立伏木小学校
大分県 大分市立明治小学校
◆中学校◆
東京都 江東区立大島中学校
東京都 江戸川区立西葛西中学校
東京都 葛飾区小松中学校
長崎県 長崎市立淵中学校
◆高等学校◆
東京都 学習院女子高等科
東京都 東京都立江戸川高等学校
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校
【奨励賞】
◆小学校◆
東京都 江東区立第一亀戸小学校
東京都 江東区立第二亀戸小学校
岐阜県 大垣市立安井小学校
◆中学校◆
東京都 江東区立深川第五中学校
埼玉県 川越市立福原中学校
奈良県 五條市立五條東中学校
◆高等学校◆
愛知県 安城生活福祉高等専修学校
長崎県 長崎県立大村高等学校
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校
【選者特選・入選】
◎特選
早春やガットの切れる音響く
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 古賀正太郎
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
イヤホンの片側はずす暮の春
東京都 学習院女子高等科 高1 角田葵
紫陽花や付箋ばかりの単語帳
愛知県 名古屋高等学校 高1 本多元樹
天の川見ようと家族映る窓
長崎県 精道三川台高等学校 高1 栗野怜馬
◎入選
ぶらんこさんらららららあそぼうよ
大分県 大分市立明野東小学校 小2 水野公太郎
太陽が朝を作ってつばめ飛ぶ
東京都 江東区立越中島小学校 小4 三部竜己
若竹にまぎれ一本まいごの木
東京都 町田市立南第一小学校 小5 井上和奏
ブーツはき少しななめのけしき見る
大分県 大分市立明治小学校 小5 平原莉子
入らないけん玉宙に円かく五月晴れ
富山県 氷見市立窪小学校 小5 和栗洸希
ベッドでねぼくがとけてる五月かな
東京都 江東区立北砂小学校 小5 李欣燃
かめむしや自分のくささしらんかお
高知県 高知市立大津小学校 小5 福島彩乃
図書室のカーテンひらく木の芽どき
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 藤井光佑
春の風船からイルカを見ています
富山県 氷見市立灘浦小学校 小6 大嶋旭
げんかんでげたふみならす祭かな
東京都 江東区立枝川小学校 小6 山崎香織
エンジンのきかないジープをおす西日
愛媛県 新居浜市立船木中学校 中2 伴野悠之介
ほうれん草歯にはさまって五時間目
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 畑山春汐
教科書の表紙の固き四月かな
東京都 学習院女子中等科 中2 熊田菜々子
妹の宝の箱は海苔の缶
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 明日彩華
三者懇廊下で待つ間息白し
京都府 京都市立加茂川中学校 中3 古谷真理
麗かな日射しがそそぐ教室(いばしょ)かな
東京都 学習院女子高等科 高2 杉山知香
風光る開けば白きパスポート
愛知県 名古屋高等学校 高2 櫻井佑馬
月曜の四限シーブリーズ掠めて夏
長崎県 精道三川台高等学校 高3 廣田大進
雪女溶けて耳朶残りけり
愛知県 名古屋高等学校 高3 原田駿
Fコード弾けしギターや風光る
愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高3 丸山千尋
◎特選
たんぽぽがわたげになるよとりになる
東京都 江東区立越中島小学校 小2 やまもとみこ
ミニトマト小さな赤ちゃんみつけたよ
鹿児島県 霧島市立永水小学校 小2 四本陽愛
母に背を向けて見ている朧月
東京都 江東区立越中島小学校 小6 南波里葉
東京の海より青い夏の空
東京都 江東区立東陽中学校 中3 大池柚嬉
「暑いね。」と髪を束ねて笑う君
長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 藤田彩花
◎入選
ひこうきになるまでとぶよぎんやんま
秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 高すぎゆな
ちょ金ばこはママのさいふだお年玉
富山県 高岡市立伏木小学校 小2 橋詰昊和
前ならえみたいに赤いチューリップ
富山県 高岡市立伏木小学校 小3 大野一心
たんぽぽがわたげになって空をとぶ
東京都 江東区立第一亀戸小学校 小3 伊藤咲季
サンマ焼くにおい広がる日曜日
富山県 氷見市立灘浦小学校 小4 黒川芽依
すいせんのラッパの音が聞きたいな
栃木県 宇都宮市立錦小学校 錦町子どもの家 小4 赤平葵
武者人形かぶとをかぶってよろい着て
埼玉県 深谷市立岡部西小学校 小4 松村真寿
ばあちゃんのたけのこりょう理最高だ
群馬県 館林市立第八小学校 小4 近藤尊
去年より小さく見えるなこいのぼり
東京都 目黒星美学園小学校 小5 坂本心優
ポップコーン春のひざしではじけてる
東京都 江東区立深川小学校 小5 中谷友星
にじ色のとかげが穴を出る日差し
滋賀県 栗東市立大宝小学校 小6 日野伶菜
右の手にゆっくりとまる赤とんぼ
富山県 氷見市立灘浦小学校 小6 関理緒七
サイダーの甘く弾ける泡の音
東京都 江東区立第二砂町中学校 中1 齋藤勇大
夏の星つなげてみたら母の顔
岡山県 山陽女子中学校 中2 西原海里
妹の宝の箱は海苔の缶
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 明日彩華
はじめてのエプロンすがた山笑う
東京都 慶應義塾中等部 中2 冨本真由
身長がたけのこみたいにのびたらな
東京都 江東区立深川第七中学校 中2 宮本裕佳
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
新しいことが始まる春の風
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 大脇玲音
双子には思ひ出二倍あたたかし
東京都 学習院女子高等科 高3 松本梨沙子
◎特選
春を待つもうすぐぼくは太こ隊
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 後藤槙吾
母に背を向けて見ている朧月
東京都 江東区立越中島小学校 小6 南波里葉
夜光虫海の中にも銀河系
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 倉林佳史
ホイッスル鳴ったら終わる僕の夏
群馬県 渋川市立子持中学校 中3 横須賀勇汰
じんわりと優しくなれる水羊羹
東京都 学習院女子高等科 高3 濵田真由美
◎入選
さくらちるわたしのかめが目をさます
東京都 目黒星美学園小学校 小2 日比野光里
さか上がりせなかをおすんだ春の風
東京都 江東区立第一亀戸小学校 小2 五十嵐香英
ビーチサンダル日やけのあとが人の字に
東京都 江東区立元加賀小学校 小3 あらいりこ
クワガタに名前つけたら家族かな
岐阜県 大垣市立安井小学校 小4 ぬなみけん一
すみれさくコンクリートのわれ目から
神奈川県 横浜雙葉小学校 小4 中山知佳穂
新学期わたしの先生ものしずか
愛媛県 新居浜市立新居浜小学校 小4 長尾怜央菜
蜆たち形にはまった人生だ
東京都 暁星小学校 小6 三好理仁
ゴンドラのまどから見ている雪景色
富山県 氷見市立窪小学校 小6 西川実潤
弁当をあけたら花びら飛んできた
大分県 大分市立明治小学校 小6 野中美羽
向日葵のまえ通るたび背伸びする
東京都 江東区立第二砂町中学校 中1 田口杏樹
夏の空「顔を上げて」と呼んでいる
岡山県 山陽女子中学校 中2 狩野琴春
燃える風黄金輝く虫の羽
愛知県 名古屋市立津賀田中学校 中2 山本一輝
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
微笑みにほほえみ返し梅の寺
東京都 江戸川区立西葛西中学校 中3 大井暖々
卒業式机に刻んだ「さようなら」
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 山川詞葉
汗拭い今の自分を越えてやる
長崎県 長崎県立大村高等学校 高1 永田香澄
月桃が花咲き知らせる慰霊の日
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校 高2 玉城光乃
甲虫我頂点と角上げて
愛知県 愛知県立安城高等学校 高3 高沢光太朗
冷えたこの体に染みる皮肉(アイロニー)
東京都 学習院女子高等科 高3 石原泉織
私にもかけてください雪魔法
東京都 学習院女子高等科 高3 宇野南
◎特選
花いっぱいぼくがばあばのつえになる
兵庫県 神戸市立義務教育学校港島学園小学部 小3 菅真太朗
つばめたちせいいっぱいな大人たち
東京都 暁星小学校 小6 田村優有
ふうせんを追ってもとどかぬ子どもたち
長崎県 長崎市立淵中学校 中1 鍵千咲姫
剥製の虚ろなる目や桜桃忌
愛知県 名古屋高等学校 高2 鬼頭孝幸
車窓から単語帳手に見る桜
東京都 学習院女子高等科 高3 平本瀬織
◎入選
はっぱのめうまれたばかりいいにおい
大分県 大分市立明野東小学校 小1 飯塚絃斗
かみさまへすずをならすとちょうがくる
秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 よね森ゆいか
遊蝶花みんなでしゃべっているみたい
大分県 大分市立明野東小学校 小3 太田遥
あげはちょうつかんでみたらやわらかい
東京都 江東区立第二亀戸小学校 小3 彭可欣
かめむしや自分のくささしらんかお
高知県 高知市立大津小学校 小5 福島彩乃
まんげつが子犬のようについてくる
東京都 目黒星美学園小学校 小5 平井美妃
百冊の本読みきって春の月
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 高橋幸太郎
春夕べつないで帰る小さな手
東京都 淑徳小学校 小5 伊藤樹璃亜
あたたかや鉄くさい手の逆上がり
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 岡部優
祖ふがよるわらも自前のしめかざり
広島県 東広島市立入野小学校 小6 山道稔晴
言いだせず線香花火消えてゆく
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 熊谷今日香
教科書の表紙の固き四月かな
東京都 学習院女子中等科 中2 熊田菜々子
八月の一人もいない歩道橋
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 関根晴子
ペン回しほおづえをつく桜桃忌
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 冨澤花凜
せみさえも遠くにきこえる本の世界
神奈川県 横須賀市立長井中学校 中3 岡原海愛
夏の海ほったらかしの黒カバン
長崎県 長崎県立大村高等学校 高1 髙比良はな
線審の旗高々と風光る
愛知県 名古屋高等学校 高2 今野巧海
冬ざるるシベリア抑留者の名簿
徳島県 徳島県立富岡東高等学校 高3 松本彩音
微分して微分して夏青くする
母に背を向けて見ている朧月
東京都 江東区立越中島小学校 小6 南波里葉
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「母に背を向けて」に作者の強い意志が感じられます。多分母との間に意見の衝突があったのでしょう。けれども季語は「朧月」。作者の頑なさはすでに氷解しているのです。(選評=菊田一平)
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教科書の表紙の固き四月かな
東京都 学習院女子中等科 中2 熊田菜々子
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「表紙の固き」の描写力で、教科書の新しさが見事に表現された。さらに季語を「四月」とした工夫から、新生活を迎えた期待感、緊張感もまた「固き」の語で暗示されている。(選評=長嶺千晶)
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蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
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静かな冬の朝、長編の物語を読み終えた。「蓋」ということばから、重厚な本であることが伝わってくる。「蓋」をする物もさまざまある。菓子箱、宝箱、棺、骨壺など。一冊の物語が辿るシーンに想像が及ぶ。( 選評=鎌田俊)
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夜光虫海の中にも銀河系
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 倉林佳史
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青白い光を放ちながら、波間に浮遊している夜光虫は幻想的で美しい。きっと波の音は涼しげで、空には満天の星が輝いているのであろう。銀河系に及ぶ少年の感覚は澄み切っていて瑞々しい。(選評=森岡正作)
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八月の一人もいない歩道橋
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 関根晴子
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立秋後も厳しい暑さが続く八月、炎天下の歩道橋は人影一つなく深閑としている。それは戦争や原爆で失われた多くの命の証のように思える。過ちを繰り返してはならないと静かに訴えている。(選評=松岡隆子)
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ホイッスル鳴ったら終わる僕の夏
群馬県 渋川市立子持中学校 中3 横須賀勇汰
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多分作者は中学の三年間をサッカーにかけて過ごしてきたのでしょう。それもこの夏の大会で終わり。夏雲の空に響き渡るホイッスルが聞こえて来そうです。 ( 選評=菊田一平)
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紫陽花や付箋ばかりの単語帳
愛知県 名古屋高等学校 高1 本多元樹
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梅雨の憂鬱な時期に、紫陽花は景色に彩りを添える。僕も電車通学のときに、英語や古文の単語帳を読んだことを思い出した。淡い色をした付箋の嵩は目をなごませると同時に、さしせまった試験の緊張を伝える。( 選評=鎌田俊)
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イヤホンの片側はずす暮の春
東京都 学習院女子高等科 高1 角田葵
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イヤホンをはずした方の耳には急にいろいろな音が聞こえてきて、それまで音楽を楽しんでいた独りの時間が断たれる。春の果てにも似た感覚。季語の「暮の春」が何気ない行為を詩にしている。(選評=松岡隆子)
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剥製の虚ろなる目や桜桃忌
愛知県 名古屋高等学校 高2 鬼頭孝幸
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太宰治が入水した忌日「桜桃忌」の配合により、硝子玉を嵌めた「虚ろなる目」という、まるで生命感の無い剥製を、太宰自身のアンニュイな「生」と重ね合わせている。( 選評=長嶺千晶)
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微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
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一生懸命数式を解いているのであろうか。「微分して微分して」のリズムが小気味良い。そこには弾ける若さがあり、夏はまさに君たちのものである。空の青、海の青、青春の青が眩しい。(選評=森岡正作)
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【優秀賞】
はっぱのめうまれたばかりいいにおい
大分県 大分市立明野東小学校 小1 飯塚絃斗
たんぽぽがわたげになるよとりになる
東京都 江東区立越中島小学校 小2 やまもとみこ
ミニトマト小さな赤ちゃんみつけたよ
鹿児島県 霧島市立永水小学校 小2 四本陽愛
お寺から白いぞう出る花まつり
富山県 高岡市立伏木小学校 小3 田中優真
ビーチサンダル日やけのあとが人の字に
東京都 江東区立元加賀小学校 小3 あらいりこ
花いっぱいぼくがばあばのつえになる
兵庫県 神戸市立義務教育学校港島学園小学部 小3 菅真太朗
まんげつが子犬のようについてくる
東京都 目黒星美学園小学校 小5 平井美妃
百冊の本読みきって春の月
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 高橋幸太郎
春を待つもうすぐぼくは太こ隊
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 後藤槙吾
かめむしや自分のくささしらんかお
高知県 高知市立大津小学校 小5 福島彩乃
図書室のカーテンひらく木の芽どき
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 藤井光佑
つばめたちせいいっぱいな大人たち
東京都 暁星小学校 小6 田村 優有
図書室の少しさみしいあたたかさ
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 増田夏実
ふうせんを追ってもとどかぬ子どもたち
長崎県 長崎市立淵中学校 中1 鍵千咲姫
向日葵のまえ通るたび背伸びする
東京都 江東区立第二砂町中学校 中1 田口杏樹
醤油つくる人々の汗輝いて
東京都 慶應義塾中等部 中2 海野里奈
夏の星つなげてみたら母の顔
岡山県 山陽女子中学校 中2 西原海里
言いだせず線香花火消えてゆく
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 熊谷今日香
妹の宝の箱は海苔の缶
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 明日彩華
東京の海より青い夏の空
東京都 江東区立東陽中学校 中3 大池柚嬉
早春やガットの切れる音響く
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 古賀正太郎
炎天の百足競争みぎひだり
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 杉田隼人
天の川見ようと家族映る窓
長崎県 精道三川台高等学校 高1 栗野怜馬
切削油汗と混じってとんでゆく
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 西尾知真
刻銘碑なぞる手の皺沖縄忌
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校 高2 大城麻衣
じんわりと優しくなれる水羊羹
東京都 学習院女子高等科 高3 濵田真由美
「暑いね。」と髪を束ねて笑う君
長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 藤田彩花
Fコード弾けしギターや風光る
愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高3 丸山千尋
車窓から単語帳手に見る桜
東京都 学習院女子高等科 高3 平本瀬織
冬ざるるシベリア抑留者の名簿
徳島県 徳島県立富岡東高等学校 高3 松本彩音
【学校賞】
◆小学校◆
東京都 江東区立越中島小学校
富山県 高岡市立伏木小学校
大分県 大分市立明治小学校
◆中学校◆
東京都 江東区立大島中学校
東京都 江戸川区立西葛西中学校
東京都 葛飾区小松中学校
長崎県 長崎市立淵中学校
◆高等学校◆
東京都 学習院女子高等科
東京都 東京都立江戸川高等学校
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校
【奨励賞】
◆小学校◆
東京都 江東区立第一亀戸小学校
東京都 江東区立第二亀戸小学校
岐阜県 大垣市立安井小学校
◆中学校◆
東京都 江東区立深川第五中学校
埼玉県 川越市立福原中学校
奈良県 五條市立五條東中学校
◆高等学校◆
愛知県 安城生活福祉高等専修学校
長崎県 長崎県立大村高等学校
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校
【選者特選・入選】
鎌田俊 選
早春やガットの切れる音響く
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 古賀正太郎
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
イヤホンの片側はずす暮の春
東京都 学習院女子高等科 高1 角田葵
紫陽花や付箋ばかりの単語帳
愛知県 名古屋高等学校 高1 本多元樹
天の川見ようと家族映る窓
長崎県 精道三川台高等学校 高1 栗野怜馬
◎入選
ぶらんこさんらららららあそぼうよ
大分県 大分市立明野東小学校 小2 水野公太郎
太陽が朝を作ってつばめ飛ぶ
東京都 江東区立越中島小学校 小4 三部竜己
若竹にまぎれ一本まいごの木
東京都 町田市立南第一小学校 小5 井上和奏
ブーツはき少しななめのけしき見る
大分県 大分市立明治小学校 小5 平原莉子
入らないけん玉宙に円かく五月晴れ
富山県 氷見市立窪小学校 小5 和栗洸希
ベッドでねぼくがとけてる五月かな
東京都 江東区立北砂小学校 小5 李欣燃
かめむしや自分のくささしらんかお
高知県 高知市立大津小学校 小5 福島彩乃
図書室のカーテンひらく木の芽どき
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 藤井光佑
春の風船からイルカを見ています
富山県 氷見市立灘浦小学校 小6 大嶋旭
げんかんでげたふみならす祭かな
東京都 江東区立枝川小学校 小6 山崎香織
エンジンのきかないジープをおす西日
愛媛県 新居浜市立船木中学校 中2 伴野悠之介
ほうれん草歯にはさまって五時間目
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 畑山春汐
教科書の表紙の固き四月かな
東京都 学習院女子中等科 中2 熊田菜々子
妹の宝の箱は海苔の缶
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 明日彩華
三者懇廊下で待つ間息白し
京都府 京都市立加茂川中学校 中3 古谷真理
麗かな日射しがそそぐ教室(いばしょ)かな
東京都 学習院女子高等科 高2 杉山知香
風光る開けば白きパスポート
愛知県 名古屋高等学校 高2 櫻井佑馬
月曜の四限シーブリーズ掠めて夏
長崎県 精道三川台高等学校 高3 廣田大進
雪女溶けて耳朶残りけり
愛知県 名古屋高等学校 高3 原田駿
Fコード弾けしギターや風光る
愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高3 丸山千尋
菊田 一平 選
たんぽぽがわたげになるよとりになる
東京都 江東区立越中島小学校 小2 やまもとみこ
ミニトマト小さな赤ちゃんみつけたよ
鹿児島県 霧島市立永水小学校 小2 四本陽愛
母に背を向けて見ている朧月
東京都 江東区立越中島小学校 小6 南波里葉
東京の海より青い夏の空
東京都 江東区立東陽中学校 中3 大池柚嬉
「暑いね。」と髪を束ねて笑う君
長崎県 長崎県立大村高等学校 高3 藤田彩花
◎入選
ひこうきになるまでとぶよぎんやんま
秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 高すぎゆな
ちょ金ばこはママのさいふだお年玉
富山県 高岡市立伏木小学校 小2 橋詰昊和
前ならえみたいに赤いチューリップ
富山県 高岡市立伏木小学校 小3 大野一心
たんぽぽがわたげになって空をとぶ
東京都 江東区立第一亀戸小学校 小3 伊藤咲季
サンマ焼くにおい広がる日曜日
富山県 氷見市立灘浦小学校 小4 黒川芽依
すいせんのラッパの音が聞きたいな
栃木県 宇都宮市立錦小学校 錦町子どもの家 小4 赤平葵
武者人形かぶとをかぶってよろい着て
埼玉県 深谷市立岡部西小学校 小4 松村真寿
ばあちゃんのたけのこりょう理最高だ
群馬県 館林市立第八小学校 小4 近藤尊
去年より小さく見えるなこいのぼり
東京都 目黒星美学園小学校 小5 坂本心優
ポップコーン春のひざしではじけてる
東京都 江東区立深川小学校 小5 中谷友星
にじ色のとかげが穴を出る日差し
滋賀県 栗東市立大宝小学校 小6 日野伶菜
右の手にゆっくりとまる赤とんぼ
富山県 氷見市立灘浦小学校 小6 関理緒七
サイダーの甘く弾ける泡の音
東京都 江東区立第二砂町中学校 中1 齋藤勇大
夏の星つなげてみたら母の顔
岡山県 山陽女子中学校 中2 西原海里
妹の宝の箱は海苔の缶
宮城県 仙台市立郡山中学校 中2 明日彩華
はじめてのエプロンすがた山笑う
東京都 慶應義塾中等部 中2 冨本真由
身長がたけのこみたいにのびたらな
東京都 江東区立深川第七中学校 中2 宮本裕佳
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
新しいことが始まる春の風
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 大脇玲音
双子には思ひ出二倍あたたかし
東京都 学習院女子高等科 高3 松本梨沙子
中西 夕紀 選
春を待つもうすぐぼくは太こ隊
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 後藤槙吾
母に背を向けて見ている朧月
東京都 江東区立越中島小学校 小6 南波里葉
夜光虫海の中にも銀河系
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 倉林佳史
ホイッスル鳴ったら終わる僕の夏
群馬県 渋川市立子持中学校 中3 横須賀勇汰
じんわりと優しくなれる水羊羹
東京都 学習院女子高等科 高3 濵田真由美
◎入選
さくらちるわたしのかめが目をさます
東京都 目黒星美学園小学校 小2 日比野光里
さか上がりせなかをおすんだ春の風
東京都 江東区立第一亀戸小学校 小2 五十嵐香英
ビーチサンダル日やけのあとが人の字に
東京都 江東区立元加賀小学校 小3 あらいりこ
クワガタに名前つけたら家族かな
岐阜県 大垣市立安井小学校 小4 ぬなみけん一
すみれさくコンクリートのわれ目から
神奈川県 横浜雙葉小学校 小4 中山知佳穂
新学期わたしの先生ものしずか
愛媛県 新居浜市立新居浜小学校 小4 長尾怜央菜
蜆たち形にはまった人生だ
東京都 暁星小学校 小6 三好理仁
ゴンドラのまどから見ている雪景色
富山県 氷見市立窪小学校 小6 西川実潤
弁当をあけたら花びら飛んできた
大分県 大分市立明治小学校 小6 野中美羽
向日葵のまえ通るたび背伸びする
東京都 江東区立第二砂町中学校 中1 田口杏樹
夏の空「顔を上げて」と呼んでいる
岡山県 山陽女子中学校 中2 狩野琴春
燃える風黄金輝く虫の羽
愛知県 名古屋市立津賀田中学校 中2 山本一輝
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
微笑みにほほえみ返し梅の寺
東京都 江戸川区立西葛西中学校 中3 大井暖々
卒業式机に刻んだ「さようなら」
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 山川詞葉
汗拭い今の自分を越えてやる
長崎県 長崎県立大村高等学校 高1 永田香澄
月桃が花咲き知らせる慰霊の日
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校 高2 玉城光乃
甲虫我頂点と角上げて
愛知県 愛知県立安城高等学校 高3 高沢光太朗
冷えたこの体に染みる皮肉(アイロニー)
東京都 学習院女子高等科 高3 石原泉織
私にもかけてください雪魔法
東京都 学習院女子高等科 高3 宇野南
長嶺 千晶 選
花いっぱいぼくがばあばのつえになる
兵庫県 神戸市立義務教育学校港島学園小学部 小3 菅真太朗
つばめたちせいいっぱいな大人たち
東京都 暁星小学校 小6 田村優有
ふうせんを追ってもとどかぬ子どもたち
長崎県 長崎市立淵中学校 中1 鍵千咲姫
剥製の虚ろなる目や桜桃忌
愛知県 名古屋高等学校 高2 鬼頭孝幸
車窓から単語帳手に見る桜
東京都 学習院女子高等科 高3 平本瀬織
◎入選
はっぱのめうまれたばかりいいにおい
大分県 大分市立明野東小学校 小1 飯塚絃斗
かみさまへすずをならすとちょうがくる
秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 よね森ゆいか
遊蝶花みんなでしゃべっているみたい
大分県 大分市立明野東小学校 小3 太田遥
あげはちょうつかんでみたらやわらかい
東京都 江東区立第二亀戸小学校 小3 彭可欣
かめむしや自分のくささしらんかお
高知県 高知市立大津小学校 小5 福島彩乃
まんげつが子犬のようについてくる
東京都 目黒星美学園小学校 小5 平井美妃
百冊の本読みきって春の月
岐阜県 大垣市立安井小学校 小5 高橋幸太郎
春夕べつないで帰る小さな手
東京都 淑徳小学校 小5 伊藤樹璃亜
あたたかや鉄くさい手の逆上がり
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 岡部優
祖ふがよるわらも自前のしめかざり
広島県 東広島市立入野小学校 小6 山道稔晴
言いだせず線香花火消えてゆく
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 熊谷今日香
教科書の表紙の固き四月かな
東京都 学習院女子中等科 中2 熊田菜々子
八月の一人もいない歩道橋
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 関根晴子
ペン回しほおづえをつく桜桃忌
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 冨澤花凜
せみさえも遠くにきこえる本の世界
神奈川県 横須賀市立長井中学校 中3 岡原海愛
夏の海ほったらかしの黒カバン
長崎県 長崎県立大村高等学校 高1 髙比良はな
線審の旗高々と風光る
愛知県 名古屋高等学校 高2 今野巧海
冬ざるるシベリア抑留者の名簿
徳島県 徳島県立富岡東高等学校 高3 松本彩音
微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
鍵盤の指躍りたる蝶の昼
愛媛県 愛媛県立今治西高等学校 高3 渡部琉々奈
松岡 隆子 選
愛媛県 愛媛県立今治西高等学校 高3 渡部琉々奈
松岡 隆子 選
◎特選
図書室の少しさみしいあたたかさ
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 増田夏実
八月の一人もいない歩道橋
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 関根晴子
炎天の百足競争みぎひだり
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 杉田隼人
刻銘碑なぞる手の皺沖縄忌
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校 高2 大城麻衣
微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
◎入選
おに役のお母さん見て手がゆるむ
鹿児島県 伊佐市立湯之尾小学校 小5 瀬戸鉄平
弟が勝つまで続くかるた取り
富山県 高岡市立伏木小学校 小6 村上 晃清
教室の机の上の春の朝
東京都 江東区立越中島小学校 小6 松下宗太郎
逃水が見える見えないまた見える
大分県 大分市立明治小学校 小6 川野悠太
流れつつ色を変えけりしゃぼん玉
大分県 杵築市立大内小学校 小6 大森かいと
言いだせず線香花火消えてゆく
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 熊谷今日香
両親のやさしい嘘に気付く冬
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 小柳清
残像の桜吹雪に瞳を閉じる
東京都 学習院女子中等科 中2 瀬戸口真衣
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
夕焼に窓から染まる五時の教室
群馬県 渋川市立子持中学校 中3 荒平倫
紫陽花や付箋ばかりの単語帳
愛知県 名古屋高等学校 高1 本多元樹
イヤホンの片側はずす暮の春
東京都 学習院女子高等科 高1 角田葵
桜咲く頃にはきっと泣いている
東京都 東京都立江戸川高等学校 高1 横山太一
冬枯や海へ出てゆく川の音
福井県 福井県立丸岡高等学校 高2 小林陸人
ショパン弾くピアノの上の夏帽子
愛知県 名古屋高等学校 高2 冨田孝太郎
ぶらんこに土の乾いてゐる夕べ
愛知県 名古屋高等学校 高2 齋藤壮人
少年B勉強せずに夏の海
長崎県 長崎県立大村高等学校 高2 山下翔平
会わぬ間に大人になって風薫る
東京都 学習院女子高等科 高3 平松葵良莉
参観の日の背筋よし青葉風
石川県 石川県立金沢錦丘高等学校 高3 東美里
階段の小さき一段春愁
愛知県 名古屋高等学校 高3 小林空
森岡 正作 選
図書室の少しさみしいあたたかさ
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 増田夏実
八月の一人もいない歩道橋
埼玉県 川越市立福原中学校 中3 関根晴子
炎天の百足競争みぎひだり
東京都 江東区立深川第七中学校 中3 杉田隼人
刻銘碑なぞる手の皺沖縄忌
沖縄県 沖縄県立読谷高等学校 高2 大城麻衣
微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
◎入選
おに役のお母さん見て手がゆるむ
鹿児島県 伊佐市立湯之尾小学校 小5 瀬戸鉄平
弟が勝つまで続くかるた取り
富山県 高岡市立伏木小学校 小6 村上 晃清
教室の机の上の春の朝
東京都 江東区立越中島小学校 小6 松下宗太郎
逃水が見える見えないまた見える
大分県 大分市立明治小学校 小6 川野悠太
流れつつ色を変えけりしゃぼん玉
大分県 杵築市立大内小学校 小6 大森かいと
言いだせず線香花火消えてゆく
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 熊谷今日香
両親のやさしい嘘に気付く冬
神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 小柳清
残像の桜吹雪に瞳を閉じる
東京都 学習院女子中等科 中2 瀬戸口真衣
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
夕焼に窓から染まる五時の教室
群馬県 渋川市立子持中学校 中3 荒平倫
紫陽花や付箋ばかりの単語帳
愛知県 名古屋高等学校 高1 本多元樹
イヤホンの片側はずす暮の春
東京都 学習院女子高等科 高1 角田葵
桜咲く頃にはきっと泣いている
東京都 東京都立江戸川高等学校 高1 横山太一
冬枯や海へ出てゆく川の音
福井県 福井県立丸岡高等学校 高2 小林陸人
ショパン弾くピアノの上の夏帽子
愛知県 名古屋高等学校 高2 冨田孝太郎
ぶらんこに土の乾いてゐる夕べ
愛知県 名古屋高等学校 高2 齋藤壮人
少年B勉強せずに夏の海
長崎県 長崎県立大村高等学校 高2 山下翔平
会わぬ間に大人になって風薫る
東京都 学習院女子高等科 高3 平松葵良莉
参観の日の背筋よし青葉風
石川県 石川県立金沢錦丘高等学校 高3 東美里
階段の小さき一段春愁
愛知県 名古屋高等学校 高3 小林空
森岡 正作 選
◎特選
お寺から白いぞう出る花まつり
富山県 高岡市立伏木小学校 小3 田中優真
醤油つくる人々の汗輝いて
東京都 慶應義塾中等部 中2 海野里奈
夜光虫海の中にも銀河系
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 倉林佳史
切削油汗と混じってとんでゆく
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 西尾知真
微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
◎入選
はっぱのめうまれたばかりいいにおい
大分県 大分市立明野東小学校 小1 飯塚絃斗
じてん車をかってほしいな春の風
東京都 江東区立第一亀戸小学校 小2 小林智明
ビーチサンダル日やけのあとが人の字に
東京都 江東区立元加賀小学校 小3 あらいりこ
すべりたいにじの上からじ面まで
東京都 江東区立越中島小学校 小3 山村介人
まんげつが子犬のようについてくる
東京都 目黒星美学園小学校 小5 平井美妃
おぼろ月池にうつってゆがんでく
岐阜県 大垣市立東小学校 小5 横幕優菜
マンションの上をまたいだ春の虹
東京都 江東区立越中島小学校 小5 沼田和佳
図書室のカーテンひらく木の芽どき
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 藤井光佑
石垣を陽炎が這う南禅寺
東京都 トキワ松学園小学校 小6 佐野克実
若芝が百葉箱を持ち上げる
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 清水悠理
こしあんですかつぶあんですかかしわもち
富山県 氷見市立窪小学校 小6 西川実潤
山笑うみんなも笑う木も笑う
東京都 江東区立第四砂町小学校 小6 澤田龍之介
黒板をすこし邪魔するサイネリア
東京都 江東区立深川第七中学校 中1 葛西菜月
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
新緑の風吹きぬける体育祭
広島県 福山市立中央中学校 中3 藤井翔大
夏の日射し金管楽器が反射する
東京都 江戸川区立西葛西中学校 中3 井上智晴
前山も遠くの山ももみじ山
愛知県 安城生活福祉高等専修学校 高1 富永ユミ
朧月将来はまだ見えぬまま
東京都 学習院女子高等科 高1 小方美智子
剥製の虚ろなる目や桜桃忌
愛知県 名古屋高等学校 高2 鬼頭孝幸
冬ざるるシベリア抑留者の名簿
徳島県 徳島県立富岡東高等学校 高3 松本彩音
【選考経過と選を終えて】
◆選考経過◆ 全国俳句大会委員長 小島健
「ジュニアの部」は本大会が九回目となります。全国の小学校・中学校・高等学校の学校単位、あるいは生徒さん個人から沢山応募をいただき、今年は小学校二二〇校八,九三一名、中学校は六一校三,六〇七名、高等学校は四六校二,三一五名、合わせて三二七校一四,八五三名の生徒さんに幼稚園児一名が加わりましたが、昨年より約一,六〇〇句少ない二四,四〇〇余句が寄せられました。
この全作品を次の選考委員六名によって、先ず予選を行い、通過作品一,四五七句を得ました
◆選を終えて◆ 中西夕紀
今回は、何回も挑戦してくれている人も、初めて参加してくれた人も、五七五の美しいリズムにのっ
て、楽しく作られて、皆さんとてもうまかったと思います。
俳句を作るとき、まずは五七五のリズムに慣れることが大切です。はじめて俳句を作る人は、どんなことでも五七五にして言ってみましょう。
例えば、校庭で、「湯のような水とび出した水飲み場」。教室で、「先生の今日のスカートちょっと派手」。
そして、五七五に少し慣れたら、季語を入れてみましょう。「ねころんでパパと待ってる流れ星」「流
れ星」が秋の季語です。季語は、季節を表す言葉です。「歳時記」には沢山の季語の解説と、それを使った句が載っています。初心者用のものもあります。
ではそれぞれの評をしましょう。小学生のみなさん、力作が並びました。五七五でたのしいことがた
くさん言えましたね。遊びの中から、みなさんは色々なことを学びます。自然から学んだ事、また兄弟や友達と遊んだことが面白い俳句になっていました。中にはおじいさんやおばあさんに俳句を教えてもらった人もいたのではありませんか。それはとてもいいことです。でも、教えてもらった俳句をそのままを出してはいけません。どんな句でもいいですから、自分で作ってみましょう。
俳句はひとりでもできますが、友達と一緒に、五七五と指を折って数えながら作ると楽しいですよ。
中学生の皆さん、部活の大変さと楽しさが目いっぱい描かれていて、迫力がありました。部活や学校生活の楽しさは人によって違いますので、人数分色々な俳句が作れると思います。そして感心したのは、勉強で苦労している句にも、いい句が多かったことです。
一生懸命、自分らしく作れば、どんな句もいい句です。中学生は青春俳句の始まりです。俳句で楽しい学園生活を描きましょう。
高校生の皆さん、応募数が少なかったのがとても残念でしたが、題材が多方面に渡って豊富だったのが良かったです。その中で、自分を客観的に描いている句や、家族への思いやりが描けた句に感心しました。沖縄の人の歴史を取材した句も力がありました。俳句になる材料は皆さんの興味の広さと関係しています。視野を広めて、心を深めて、色々なことを俳句にしましょう。
次回は、中高生からも沢山の応募を待っています。
お寺から白いぞう出る花まつり
富山県 高岡市立伏木小学校 小3 田中優真
醤油つくる人々の汗輝いて
東京都 慶應義塾中等部 中2 海野里奈
夜光虫海の中にも銀河系
東京都 江東区立深川第六中学校 中3 倉林佳史
切削油汗と混じってとんでゆく
鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 西尾知真
微分して微分して夏青くする
広島県 広島県立広島高等学校 高3 赤木佑実
◎入選
はっぱのめうまれたばかりいいにおい
大分県 大分市立明野東小学校 小1 飯塚絃斗
じてん車をかってほしいな春の風
東京都 江東区立第一亀戸小学校 小2 小林智明
ビーチサンダル日やけのあとが人の字に
東京都 江東区立元加賀小学校 小3 あらいりこ
すべりたいにじの上からじ面まで
東京都 江東区立越中島小学校 小3 山村介人
まんげつが子犬のようについてくる
東京都 目黒星美学園小学校 小5 平井美妃
おぼろ月池にうつってゆがんでく
岐阜県 大垣市立東小学校 小5 横幕優菜
マンションの上をまたいだ春の虹
東京都 江東区立越中島小学校 小5 沼田和佳
図書室のカーテンひらく木の芽どき
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 藤井光佑
石垣を陽炎が這う南禅寺
東京都 トキワ松学園小学校 小6 佐野克実
若芝が百葉箱を持ち上げる
東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 清水悠理
こしあんですかつぶあんですかかしわもち
富山県 氷見市立窪小学校 小6 西川実潤
山笑うみんなも笑う木も笑う
東京都 江東区立第四砂町小学校 小6 澤田龍之介
黒板をすこし邪魔するサイネリア
東京都 江東区立深川第七中学校 中1 葛西菜月
蓋をするやうに本閉ぢ冬の朝
愛媛県 愛光中学校 中3 三神沙生
新緑の風吹きぬける体育祭
広島県 福山市立中央中学校 中3 藤井翔大
夏の日射し金管楽器が反射する
東京都 江戸川区立西葛西中学校 中3 井上智晴
前山も遠くの山ももみじ山
愛知県 安城生活福祉高等専修学校 高1 富永ユミ
朧月将来はまだ見えぬまま
東京都 学習院女子高等科 高1 小方美智子
剥製の虚ろなる目や桜桃忌
愛知県 名古屋高等学校 高2 鬼頭孝幸
冬ざるるシベリア抑留者の名簿
徳島県 徳島県立富岡東高等学校 高3 松本彩音
【選考経過と選を終えて】
◆選考経過◆ 全国俳句大会委員長 小島健
「ジュニアの部」は本大会が九回目となります。全国の小学校・中学校・高等学校の学校単位、あるいは生徒さん個人から沢山応募をいただき、今年は小学校二二〇校八,九三一名、中学校は六一校三,六〇七名、高等学校は四六校二,三一五名、合わせて三二七校一四,八五三名の生徒さんに幼稚園児一名が加わりましたが、昨年より約一,六〇〇句少ない二四,四〇〇余句が寄せられました。
この全作品を次の選考委員六名によって、先ず予選を行い、通過作品一,四五七句を得ました
◆選を終えて◆ 中西夕紀
今回は、何回も挑戦してくれている人も、初めて参加してくれた人も、五七五の美しいリズムにのっ
て、楽しく作られて、皆さんとてもうまかったと思います。
俳句を作るとき、まずは五七五のリズムに慣れることが大切です。はじめて俳句を作る人は、どんなことでも五七五にして言ってみましょう。
例えば、校庭で、「湯のような水とび出した水飲み場」。教室で、「先生の今日のスカートちょっと派手」。
そして、五七五に少し慣れたら、季語を入れてみましょう。「ねころんでパパと待ってる流れ星」「流
れ星」が秋の季語です。季語は、季節を表す言葉です。「歳時記」には沢山の季語の解説と、それを使った句が載っています。初心者用のものもあります。
ではそれぞれの評をしましょう。小学生のみなさん、力作が並びました。五七五でたのしいことがた
くさん言えましたね。遊びの中から、みなさんは色々なことを学びます。自然から学んだ事、また兄弟や友達と遊んだことが面白い俳句になっていました。中にはおじいさんやおばあさんに俳句を教えてもらった人もいたのではありませんか。それはとてもいいことです。でも、教えてもらった俳句をそのままを出してはいけません。どんな句でもいいですから、自分で作ってみましょう。
俳句はひとりでもできますが、友達と一緒に、五七五と指を折って数えながら作ると楽しいですよ。
中学生の皆さん、部活の大変さと楽しさが目いっぱい描かれていて、迫力がありました。部活や学校生活の楽しさは人によって違いますので、人数分色々な俳句が作れると思います。そして感心したのは、勉強で苦労している句にも、いい句が多かったことです。
一生懸命、自分らしく作れば、どんな句もいい句です。中学生は青春俳句の始まりです。俳句で楽しい学園生活を描きましょう。
高校生の皆さん、応募数が少なかったのがとても残念でしたが、題材が多方面に渡って豊富だったのが良かったです。その中で、自分を客観的に描いている句や、家族への思いやりが描けた句に感心しました。沖縄の人の歴史を取材した句も力がありました。俳句になる材料は皆さんの興味の広さと関係しています。視野を広めて、心を深めて、色々なことを俳句にしましょう。
次回は、中高生からも沢山の応募を待っています。