多田多恵子の【野花手帖3】

 彩り乏しい冬の庭に、万両の赤い実が鮮やかだ。

 濃い常緑の葉の陰になかば隠れるようにして、つぶらな実は真っ赤に頬を染め、ちょっぴり恥ずかしげに下を向く。フリルのように縁が小さく波打つ葉もかわいらしい。

 藪柑子科の常緑低木。関東以西の暖地に自生し庭に植えられる。実の美しさを讃えて「万両」の名があり、対をなす「千両」とともに正月の縁起植物として飾られる。

 赤い実は鳥を誘う。鵯や目白が実を食べるがあまり食は進まず、春まで(時には夏まで)実がつややかに残っている。水っぽくて栄養価に乏しいので、鳥も少しずつしか食べないのだ。でも、そのおかげで、少しずつあちこちに、種子はまんまと運ばれる。

 葉の縁を虫眼鏡でよく見ると、フリルとフリルの間に小さな丸いこぶがある。じつはこのこぶ(葉瘤)の内部には、共生細菌が住む部屋がある。細菌は空気中の窒素をとりこんで養分に変えるが、一部は万両に流れる。細菌が支払う家賃というわけだ。