多田多恵子の【野花手帖1】
野に出て身近な草木に親しもう。秋の野歩きはまた格別、無数の宝石がきらめいている。
草木の実は、赤や黒や青に熟してきらりと光る。私はここよ、食べてね。色艶で鳥を誘って飲み込ませ、果肉に潜ませた種子を新しい土地に運ばせようとしているのだ。
臭木は赤と青の色の対比で鳥の目を引く。晩秋、実を包んでいた萼は、星形に開く。と、真紅の星の中心に瑠璃色の玉! まるで天然のブローチだ!
色の対比による誇示効果を、生態学で「二色効果」と呼ぶ。自然界に例は多い。山椒の赤い果皮が裂けて黒い種子が現れる。珊瑚樹の実の房には赤い未熟果と黒い熟果が混在する。鳥向けのコマーシャルだ。
臭木は明るい道端や林緑に生える落葉樹で、街中でも鳥が種子を運んで芽生えてくる。名は、葉を揉と胡麻に似た異臭がするため。におい成分には苦味もあり、虫への防衛として働く。ところがカブラババチという虫は、葉裏の微細な突起をなめてこの成分を体に取り込むと自身の鳥に対する防衛に転用し、さらに異性を誘ったり生殖機能を高めたりする媚薬として利用するという。
植物と鳥と虫。複雑な利害関係が錯綜する。
