多田多恵子の【野花手帖2】

 多くの草木がばたばたと店をたたむ頃、八手は開店祝いの連発花火を冬空高く打ち上げる。

 打ち上げ花火を連想させる白い花序。小さな五弁花が20から50個ほど球状に集まり、それが枝分かれした枝に軸にさらに何十個も集まって、天狗の葉団扇そっくりの大きな葉の上に立ち上がる。掌状に深く裂けた葉が名の由来。本州以南の海沿いの林に生えるウコギ科の常緑低木で、日陰に強く、庭や公園にも植えられる。

 花期は11月から1月。時季外れのレストランは、虫のお客で大賑わい。花は乳白色の床面にきらきらと蜜の滴を光らせて虫を誘う。冬の蠅や花虻たちが、暖かな日には日がな一日、蜜のカクテルや花粉のごちそうに酔いしれる。時季をあえてずらした逆転の発想は大成功だ。

 個々の花を見てみよう。咲き始めの花には花びらと雄しべがあるが、ほどなく脱落。と、今度は五本の雌しべが開いて花粉を受ける。1個の花が、段階を経て雄から雌に変化するのだ。自らの花粉で受精しないための花のひそかな工夫である。