第47回関西俳句大会

日時:平成24年5月23日

於:大阪・淀屋橋朝日生命ホール

【朝日新聞社賞・関西俳句大会賞】
悪戯をしさうな仏手柑の指   有岡巧生

【関西俳句大会賞】
まつ白な毛糸を買ひて母となる   若村愛子
いたちの尾穴いつぱいに入りゆく   岩口誠一
一枚を脱いで猪鍋食べつくす   芳田トモ子
まんさくや渓ひとつ越え隣家まで   大石久美
夕暮のもの言ひたげな雪だるま   井上あや子
一月や弓のかたちの弓袋   中西宏
金閣の光の中の松手入   籾田あやの
新藁の小屋の外まで匂ひけり   浦井善史

茨木和生特選
安心の高さ貌出す鴉の子   佐々木志う
檸檬しぼるほどの握力ならありぬ   蘭定かず子
懸想文売りに懸想をしたるらし   神原廣子

金久美智子特選
蜻蛉や橋を残して道廃れ   飯野定子
古畳舞ひくぼめては里神楽   若村愛子
島の子の和讃にも似て手毬唄   田中ひろこ

森田峠特選
梅干場梅干さぬ日も梅匂ふ   藤谷紫映
花御堂落ちたる花は二度葺かず   広田祝世
攻め窯に三日三晩の青葉木菟   本村幸子

山尾玉藻特選
悪戯をしさうな仏手柑の指   有岡巧生
茶畑の荒れて茶の花盛んなる   松澤美智枝
巣箱掛く一番先に日当る木   浅井陽子

岡田日郎特選
探梅に猿一団と出くはせり   伊藤志津子
氾濫のありし川辺や曼珠沙華   伊藤しの
箍青き桶に若水汲みにけり   渡辺政子

後藤比奈夫特選
毛糸編むおしやれ心の失せぬ間に   河野信子
法善寺舞台のやうな雪が降る   浜崎民子
子供には鞍つけてほし茄子の馬   森本成子

大石悦子特選
亀の子の頭二粒泳ぎ来る   谷口一好
生きんとて乳房失ひ冴返る   野口喜久子
ヤマダニシキ蝗ヒノヒカリ蝗   青山妙子

鷹羽狩行特選
薬喰話大きくなりにけり   南波保子
なかなかに寝つけずにゐる宝船   福本せつこ
而して跡形もなく鉾解かれ   奥村竹峰

山崎ひさを特選
ふるさとに齢忘れて踊りけり   後藤ひろ
てつぺんの弟子を叱りて松手入れ   山口一世
叱ることありてマスクをはづしけり   大島幸男

古賀雪江特選
木の芽風胸高に持つ募金箱   稲積愛子
まつ白な毛糸を買ひて母となる   若村愛子
一枚を脱いで猪鍋食べつくす   芳田トモ子

辻田克巳特選
美しく表紙を破り初暦   土利安山牛
冬の雨子は外ばかり見てをりぬ   草川瑠璃
しんしんときのふの雪の上に雪   金津やよい

角光雄特選
草虱とりあひちよつと好きな人   山田貞子
ただ風とすれちがふだけ枯木道   ?田佐土子
うしろより人の手が出て暮の市   中村房枝

品川鈴子特選
銀盤に投げ入れられて冬のばら   能勢ゆり
悪戯をしさうな仏手柑の指   有岡巧生
手榴弾ほどの海鼠を握りしむ   岡田貞二

三村純也特選
ゴールキーパー一瞬月を仰ぎけり   前川加代子
千枚田より風花の海に散る   伊藤秀雄
弁当もまたそれらしく初芝居   山形陽彦

大橋晄特選
祖父が打ち父が打ちたる棚田打つ   和田仁
大灘の闇へ老漁夫豆を撒く   後藤ひろ
ゴールキーパー一瞬月を仰ぎけり   前川加代子

西村和子特選
ゐのこづち取り切れぬまま句座にあり   高野卓也
楽隊のチューバに映る城の梅   田尻駿一郎
山動くはずなけれども雪煙   森山久代

田島和生特選
ぼうたんの風を袂に絵解き   僧西浦昭美
竜の骨出土の崖に囀れり   田富子
誤植詫びをり初夢の中にても   大久保和子

橋本美代子特選
観音の千手にまさる会陽の手   加計姷
干蒲団叩く音さへ反抗期   中本英治
とんど組むみんなで雪を踏み固め   島田たみ子

水原春郎特選
訪へば牛が首出す小春かな   吉田藤治
被災者に膝折る陛下あたたかし   たなかしらほ
葱に付く土をも見せて行商女   山下まさき

塩川雄三特選
夕暮のもの言ひたげな雪だるま   井上あや子
弓始楷書の如き人ばかり   吉田力雄
煤逃げの男の意地を通しけり   蓮井いく子

大峯あきら特選
いたちの尾穴いつぱいに入りゆく   岩口誠一
まんさくや渓ひとつ越え隣家まで   大石久美
まつ白な毛糸を買ひて母となる   若村愛子

小路紫峽特選
帰国して二月礼者ともてなさる   松井ふみを
雪原の一樹は鳥の塒かな   碇 天牛
煤逃や携帯電話置いて行き   谷口智鏡

鈴木鷹夫特選
冬日和癌もろともに母を焼く   瀬野浩
湖の奥のみづうみ小鳥来る   吉田眞知子
一枚を脱いで猪鍋食べつくす   芳田トモ子

松崎鉄之介特選
桜鯛釣る傍らに阿比浮かび   塩出眞一
悴むや空也の尖る喉仏   光田道子
まんさくや渓ひとつ越え隣家まで   大石久美

棚山波朗特選
被災者に膝折る陛下あたたかし   たなかしらほ
大綿の漂ふとなく舞ふとなく   束野淑子
新藁の小屋の外まで匂ひけり   浦井善史

柏原眠雨特選
猟銃を持たしてもらふ薬喰   北田桃代
金閣の光の中の松手入   籾田あやの
聞込みの刑事になつく羽抜鶏   河内きよし

山本洋子特選
太平洋一目の蜜柑摘みにけり   小西須麻
いたちの尾穴いつぱいに入りゆく   岩口誠一
巡視船雲の峰より戻りけり   塩出眞一

岩城久治特選
尻の肉落ちしと思ふ初硯   山内利男
悪戯をしさうな仏手柑の指   有岡巧生
檸檬しぼるほどの握力ならありぬ    蘭定かず子

星野麥丘人特選
子に残す日誌阪神震災忌   堀瞳子
攻め窯に三日三晩の青葉木菟   本村幸子
一月や弓のかたちの弓袋   中西宏

有馬朗人特選
七つより祖母が引き取る手毬唄   原澤昇司
橋を発ち橋に着きたる絵双六   竹中弘明
早鞆の船脚迅き良夜かな   田中利則