第48回関西俳句大会

 

日時:平成25年5月25日

於:大阪・淀屋橋朝日生命ホール

【朝日新聞社賞・関西俳句大会賞】
蜜豆や母の着物のよき匂ひ   平石和美

【関西俳句大会賞】
海を向く位置が上座や浜焚火    尾?亥之生
雨あとの闇美しき十夜かな   すずき春雪
鴉にも餅撒く吉野山始   上村佳与
行く秋の客あれば発つ渡し舟   碇天牛
癒えてけふ厨に春の灯をともす   小鉢愛子
あなどつてゐてずぶ濡れや花の雨   小松丈夫

茨木和生特選
月山の輝く日なり鍬始    本村幸子
鴉にも餅撒く吉野山始   上村佳与
豆撒きの手首よく利く舞妓かな   中村房枝

鷹羽狩行特選
手花火のまはりの闇の大いなる   江戸としえ
母よりも父に素直や知恵詣   西浦昭美
降る雪に風の力の加はりぬ   加瀬光雄

大峯あきら特選
蜜豆や母の着物のよき匂ひ   平石和美
雨あとの闇美しき十夜かな   すずき春雪
あなどつてゐてずぶ濡れや花の雨   小松丈夫

山尾玉藻特選
一切の陰なき雪に楮晒す   尾崎恵美子
降る雪の一番遠い雪を見る   中西宏
一舟に積まれて大いなる鵜籠   植松秀子

辻田克巳特選
数へ日を六五四三二一と   濱田武利
蜜豆や母の着物のよき匂ひ   平石和美
寒夕焼使ひ果して子ら帰る   木戸てい子

岡田日郎特選
沖波の白き尖りや寒波来る   松田ひろ
宍道湖に朝日遍し蜆舟   長谷川紀美子
沖波の鎮まりをらず冬の虹   中家桂子

朝妻力特選
寒施行替への草鞋を腰に提げ   広岡育子
堂縁に正座で憩ふ遍路衆   加計姷
何事もなくて日暮の障子かな   畑田としゑ

松崎鉄之介特選
樏の千鳥足なる婚の列   河内きよし
祭稚児殿上眉に仕上がりぬ   芳田トモ子
亜麻仁油を塗りて休ます輪   前田攝子

後藤比奈夫特選
海を向く位置が上座や浜焚火   尾亥之生
花のごと雪にひろげて蟹を売る   藤原風驚子
足萎えて在しても白足袋の母   池野敏子

大石悦子特選
身に合ひし試着の毛皮コートかな   小林きく女
あなぐまの糞よりわつと芽吹く柿   栗林美津子
石磴はいやはや木の実しぐれかな   左近静子

角光雄特選
長生きの途中に買ひし冬帽子   吉村艶子
日溜りは母のぬくもり福寿草   和田富子
行く秋の客あれば発つ渡し舟   碇天牛

三村純也特選
初つ端にテストありけり夏期講座   森田幸夫
転校の日の浅けれど卒業す   田邉富子
民宿のハンガーに干す屑若布   渡辺政子

古賀雪江特選
菊枕裏返しては又眠る   松本節子
畝立ての土のこはばる余寒かな   岡本明美
初蝶の迷ひを風の掬ひけり   名倉芳子

山崎ひさを特選
杭深く打つて猪垣づくりかな   吉田ひろし
長生きの仲間入りして日向ぼこ   伊藤とし子
癒えてけふ厨に春の灯をともす   小鉢愛子

棚山波朗特選
草放ち野焼の前の風を読む   田島もり
雨あとの闇美しき十夜かな   すずき春雪
十文字縛り能登より蟹届く   藤原風驚子

小路紫峽特選
初法話勿体なくも立ちて聞く   中野はつえ
蜜柑山聞きしに勝る斜面かな   藤本則
そのうちにとは何時のこと年暮るる   植村蘇星

塩川雄三特選
胸中に燃ゆるものありお山焼   瀬野浩
いつになく遠く来てをり土筆摘み   井上次雄
結局は居眠つてゐる春炬燵   金津やよい

大橋晄特選
山に栖むものに声かけ寒施行   久保壽子
癒えてけふ厨に春の灯をともす   小鉢愛子
山国や娶り話に鰤さげて   山内利男

森田峠特選
海を向く位置が上座や浜焚火   尾亥之生
前掛に前掛重ね牡蛎割女   山田東海子
雪を掻く気力も失せて雪を見る   小川愛

品川鈴子特選
嬰に似し白菜の尻洗ひけり   岡田貞二
寒卵一個飲み込み一句出す   石井のぼる
抽斗にアンダルシアの桜貝   谷野由紀子

橋本美代子特選
寝ころびて星座を習ふ暮の秋   栗林美津子
障子貼り替へて日当る石鼎庵   山中弘通
首伸ばす白鳥に児ら後退り   丸谷領一

岩城久治特選
桃を剥く皮ゆつくりと引きにけり   杉口麗泉
おしくらまんぢゆういつもあの子を押してゐし   池田緑人
歩きたくなりて手袋はめにけり   加舎泰子

田島和生特選
額づきて御仏と冷え同じうす   鳥井嘉道
狩衣の君より受くる福の豆   宮谷昌代
檻の鷹眼するどく老いにけり   河合瑞代

山本洋子特選
雷の物言ふやうに近付けり   恵利菊江
蜜豆や母の着物のよき匂ひ   平石和美
あなどつてゐてずぶ濡れや花の雨   小松丈夫

星野麥丘人特選
腹帯にも朱印を押せり遍路寺   川瀬清子
六斎の鉦を倅に譲りけり   森田幸夫
罔象女祀りて村の鮎供養   和田富子

西村和子特選
こつとんと小舟漕ぎ出す小春かな   國田欽也
交番に祭襷の落しもの   吉田藤治
ほんたうの話もありぬ鮟鱇鍋   青山妙子

柏原眠雨特選
みやげ屋の鏡が燃ゆるお山焼き   中村一志
水蹴つて水に跳びつく上り鮎   伊藤曻

有馬朗人特選
凍て解きてより月光の鶴となる   小畑晴子
どんどより転がり落ちて立つ達磨   千葉三郎
高千穂に神鼓打ち込む良夜かな   名倉芳子

金久美智子特選
筍を御饌の要に山日和   中川晴美
海沿ひの道はるばると帰省かな   三尾風果
芋峠越ゆれば吉野風花す   吉川康子


【当日句】
辻田克巳特選
胴上げのごと噴水の落ちにけり   中谷まもる
根岸善雄特選
深吉野の闇に吊るして螢籠   小畑晴子
小路紫峡特選
水打つて世の仕来りに逆らはず   秋山観水
山本洋子特選
百発百中先生の草鉄砲   名村早智子
品川鈴子特選
補陀落の海にトラフや卯波立つ   瀬野浩
大橋晄特選
虹立つと告げて去りたる配達夫   小路智壽子
朝妻力特選
髪洗ふもうすぐ明日といふ刻に   東條未英

 
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