俳句カレンダー鑑賞  平成30年12月

俳句カレンダー鑑賞 12月
てつちりや徹頭徹尾吉良びいき 加古宗也

 12月に入ると巷では、「忠臣蔵」がもて囃される。しかし、悲しいかな吉良上野介義央は名君なのに敵役。
 掲句の「徹頭徹尾吉良びいき」という鋼のような、それでいて人間くさい表現は赤穂事件の不条理に迫る勢いがある。と同時に三河の風土と人情をも熱く感じさせる。
 鍋を囲んでの吉良談議、鍋は鍋でもふぐ鍋であるところが、大いに句意を盛り立てている。三河の風土を背負って活躍中の作者ならではの俳諧味を表出している。
 かつて、吉良を訪れた村上鬼城は〈行春や憎まれながら三百年〉の句を残された。吉良家の菩提寺「華蔵寺」には、その句碑が静かに座る。
 作者は今年、第5句集『茅花流し』を刊行。
〈四十七人の刺客義士の日とは笑止〉〈師直も主税も土の雛かな〉を収める。(荻野 杏子)
てつちりや徹頭徹尾吉良びいき

加古宗也

 社団法人俳人協会 俳句文学館572号より