俳句カレンダー鑑賞 平成30年7月
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第一句集『青葡萄』所収の一句である。創作年が昭和55年ということは、作者30代半ばの頃の作品といえようか。
掲句には沸々と闘志を滾らせ、夢と希望に燃えていた作者の、未来を見据えている風貌が確かに感じられる。
「夜も太りをり」と詠うことで、却って昼間の白雲の勢いがありありと浮かび、同時に夜も育つ白雲を透徹した目で見据え、天地運行の妙味を感受する作者を思う。
季語「青胡桃」の「青」ゆえの青春性も適っていよう。
自註によると「題詠の句。疎開育ちの体験がイメージを呼び起こす。梅雨明けの積乱雲は、夜でも白々と太って見える。青胡桃も太って見える。」とある。
「青胡桃」「白雲」と「あ」音を重ねることで、清潔なリリシズムも感じられる一句である。 (福神 規子)青胡桃白雲は夜も太りをり
伊東肇
社団法人俳人協会 俳句文学館567号より