俳句カレンダー鑑賞 平成30年4月
- 俳句カレンダー鑑賞 4月
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「凧の脚」に着目した点がユニークであると同時に、凧の動きをありありと思い起こさせる描写である。
読み下してゆくと、はじまりの「降りてくるとき」という句跨りの微妙なリズムが、大空から地上へと戻ってくる凧の速度の変化と体勢の緩みに重なる。更に、座五に至るまでのひらかな表記の連なりから、「凧の脚」の嫋やかな動きを滞りなく目で追うように味わえ、平明な中にも豊かな表現の妙が感じられる。
作者の師、関戸靖子先生の「引き算の詩型」という一文を思い出すおおらかな味わいである。 和凧が高々と揚がっていた時は、風にたなびいて凧の状態を安定させていた「凧の脚」。脱力した凧と共にその長い紙がひらひら降りる様は、長閑な春の余韻を生んでいる。句集『あをぞら』所収。 (宇野 恭子)降りてくるときやはらかき凧の脚
井上弘美
社団法人俳人協会 俳句文学館564号より