俳句カレンダー鑑賞  平成30年3月

俳句カレンダー鑑賞 3月
草を摘む天与の形香を称へ 加藤耕子

 掲句からは、春、新しく萌え出た若草を摘みに野に出た感動が伝わってきます。芹、蓬、土筆、仏の座、蕗の薹、菫、蒲公英、紫雲英など、生命をいただく食材として摘む草であったり、花を愛でるのに摘む草であったりの違いはありますが、ひとつひとつの花や葉や茎の形に、摘んだときの指に残る香に不思議さを感じます。それがそのまま造化の神が造られたとの思いにいたります。
 自然の、造化の妙への驚き、「天与の形」の認識は摘む者の心を豊かにさせ、読む者の胸にも響きます。
 草摘むという人間の営みは、自然の恵みに感謝しつつ楽しむものでもありましょう。平凡な日常からものの本質を自分の感覚でつかみ取る、発見そして自然への随順のこころを平明なことばで表現している作品と思うのです。(藤島 咲子)
草を摘む天与の形香を称へ

加藤耕子

 社団法人俳人協会 俳句文学館563号より