俳句カレンダー鑑賞 平成30年3月
- 俳句カレンダー鑑賞 3月
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作者は福島の人。放射能汚染が無害になるには10万年の時を要する。10万年前には人類はまだ存在していなかった。途方もない時間だ。フィンランドの放射性廃棄物最終処分施設「オンカロ」では、10万年後の世界にどうやってその危険性を知らせるかが真剣に議論されている。今の言語が10万年後まで続いている保証はないからだ。
原発は止めようという大きな流れも、想像力の希薄な政治家によって、すぐに再稼働へと変えられてしまった。原発事故の帰還困難区域は三日月湖のように取り残されたままである。
十悟氏は若い頃に環境研究のため原発周辺の水辺に通っていた。その思い出の地が今は立入禁止。鴨の群れが北へ帰ってゆく。三日月湖となった地へ忘れないとの思いの橋を架ける。再生の祈りが伝わる。
(大河原政夫)鴨引くや十万年は三日湖
永瀬十悟
社団法人俳人協会 俳句文学館563号より