俳句カレンダー鑑賞  平成28年11月

俳句カレンダー鑑賞 11月
年寄にひととせ迅し十一月 辻田克巳

 そのままに読み下していくと、句意は平明かつ明快のようだが、詩となる句には周到な言葉遣いがある。上五の「年寄」には、例えば町役などの年寄のイメージが垣間見え、また「迅し」には無常迅速の無常感を窺うことができる。
 この句で厄介なのが、「十一月」。十一月は当初は寒さはそれほどでもないが、中旬を過ぎると一段と冬の気配が増してくるという、一年の内で最も日の移ろいに心が動く月である。その辺に敢えて十一月の季語を据えた真意があるように思う。
 また、座五を十一月の6音にすることも句に一層の余韻を与えている。世阿弥の「老後の花」ではないが、かつて作者は老後にならないと中々見えてこないものがあり、「積み上がった末に醸熟された英知の如きは、いわば年寄の宝」と述べられたことがある。 (服部 友彦)
年寄にひととせ迅し十一月

辻田克巳

 社団法人俳人協会 俳句文学館547号より