俳句カレンダー鑑賞  平成28年8月

俳句カレンダー鑑賞 8月
天上に君あり地には大花火 水原春郎

 『自註 ・水原春郎集』に所収。平成16年作。「伊豆高原の花火大会。榮之君が元気の時はいつも一緒で楽しかった。天上から見ているに違いない」と作者の言葉が添えられている。「天上の君」は「馬醉木」?田千鶴子主宰のご夫君である。
 「天上に君あり」と言い切った勁い措辞には、作者の「天上の君」への深い思いが溢れている。
 「天上から見ているに違いない」と述べておられる作者は、花火の打ち揚がる瞬間、天上へ呼び掛けておられるのかもしれない。
 大空に開く花火を見上げておられる作者の胸臆には、「天上の君」と一緒に過ごした遠い日が去来しているのであろう。
 「天上に君あり」の心情的な表情に対し、「地には大花火」の大胆な結びが印象的で、心を惹かれる一句である。 (清水 節子)
天上に君あり地には大花火

水原春郎

 社団法人俳人協会 俳句文学館544号より