俳句カレンダー鑑賞  平成27年7月

俳句カレンダー鑑賞 7月
最澄の山や消えずの灯の涼し 加古宗也

 『古事記』にもその名の見える比叡山。この山全域に点在する沢山の堂塔をまとめて延暦寺と呼んでいる。開祖は平安初期の高僧最澄である。
 「最澄の山や」という親しみ深く大きな把握によって、夏山の静かな迫力に加え、句にゆったりとした時が流れ始める。
 比叡山に1200年以上灯され続けている「不滅の法灯」を「消えずの灯」と言い換え、その表現は語感がよく美しい。
 実はこの法灯、信長の焼討ちによって一回消えたことがあるそうだ。幸いにも山形県の立石寺に分灯してあったので、再び灯すことが出来たという。そんなドラマを知ると、一層この句の涼しさに納得させられる。
 死をも達観している鬼城俳句の、その魂にも似た涼しさの境地が見事に表現されている。  村上鬼城系を守る作者の、骨太俳句である。 (荻野 杏子)
最澄の山や消えずの灯の涼し

加古宗也

 社団法人俳人協会 俳句文学館531号より