俳句カレンダー鑑賞  平成27年6月

俳句カレンダー鑑賞 6月
千年のことば称へむさくらんぼ 鈴木太郎

 海に囲まれた日本列島には、海を渡って多様な人々が移り住んできた。彼らの言語がアルタイ語系なのか、アウストロネシア語系なのか、はたまたタミル語系なのかは定かでないが、それらが入り交じって日本語が形成されたという。
 この日本語から生まれた和歌、そこから岐れた俳諧により「ことば」は磨きをかけられ、語彙を豊かにしてきた。
 作者は俳句作家として「ことば」の歴史に連なることの重みを嚙みしめているのだ。一粒のさくらんぼのごとく輝く「ことば」への希求が「称へむ」に籠められている。
 西洋実桜の実は、中近東・ヨーロッパでは有史以前から食されてきた。
 品種改良の重ねられた味覚を堪能しながら、作者は「ことば」と「さくらんぼ」に纏わる人間の長い営みに思いを馳せたのだろう。(物江 里人)
千年のことば称へむさくらんぼ

鈴木太郎

 社団法人俳人協会 俳句文学館530号より