俳句カレンダー鑑賞 平成29年11月
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平成4年刊行の第1句集『登高』所収、昭和57年の作である。集中には〈蛇口より曳きだす寒の水一本〉など多くの名句があるが、掲句は上谷氏にとって余程愛着のある句に違いない。
東京の台東区千束にある鷲神社の酉の市は特に有名で、元は武運の神であったが、近くに遊郭の吉原が出来てから大いに栄えたという。また三の酉は暦の関係で無い年もあるが、有るという年には火事が多いという謂れもあり、また違った意味での熱気もあろう。
まして雨である。足元に気を配り横の呼び声に応じ、人に押されて人を押して行く。そんな中、擦れ合う傘と傘の隙間の一瞬に、周囲の喧噪や喚声、縁起物の艶やかな彩りまでも、すっきりと浄化されたような煌々たる天を認めたのである。自在な発想と新鮮な感覚で酉の市を詠みとった句である。
(森岡 正作)雨傘の隙間を煌と三の酉
上谷昌憲
社団法人俳人協会 俳句文学館559号より