俳句カレンダー鑑賞 平成29年10月
- 俳句カレンダー鑑賞 10月
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絵画でも観ているような美しさに、息を呑むほどだ。
落葉松黄葉は作者の詩世界を高揚させる。一糸の乱れもない完璧把握に落葉松黄葉の幻想的な光景が蘇る。掲句も愛憐の情を芯に秘めつつ画布に載せるような染筆で成されていて、読者の心を離さない。不用な景を削り去って表現簡潔。それだけに一層月明の落葉松が際立って美しい。
一句を成すということは表現技術というより、その人の奥の奥にある生き方そのものである。 いのちとも繫がるもので作品からそんな声が聴こえてくる。
行雲流水の心で一点の執着もなく俳句を詠んで行きたいと作者は吐露されている。
俳句は「師系の文学」と言われる。水原秋櫻子一筋に研鑽を積まれた作者の美意識は、さらなる深淵へと誘われている。 (ほんだゆき)月明に炎立つ落葉松黄葉かな
根岸善雄
社団法人俳人協会 俳句文学館558号より