俳句カレンダー鑑賞  平成29年3月

俳句カレンダー鑑賞 3月
雛の灯に雪のあかりの加はりぬ 小野寿子

 女児の息災を祈って行われる桃の節句は、五節句の一つ。春とは言え北国の青森はまだ寒く、残雪の上に春雪が積もる日々である。そのような土地柄であればこそ、雛人形を飾り家の中を明るくしたい。だからといって長くは飾っていない。いつまでも飾っていては、娘の婚期が遅れるという言い伝えがあり、まだそのままにして置きたい子をよそに、さっさと納める親心があった。
 掲句は雛段のぼんぼりの淡い灯に窓からの雪あかりが加わる。雛の描写は無いものの、かんばせや佇まいが美しく立ち上がり、想像できる。
 小野氏のお宅からは八甲田山が眺望出来ると聞く。正に大いなる雪あかりが及ぶのである。
 津軽の風土溢れる力強さと華麗さが、瞬時の発見と感動により表現されていて胸に響いてくる。第一句集『角巻』に所収の作。(高橋 千恵)
雛の灯に雪のあかりの加はりぬ

小野寿子

 社団法人俳人協会 俳句文学館551号より