俳句カレンダー鑑賞 平成29年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
-
一読、日常の作者が見えてくる。「春時雨」は冬の時雨と違い、冷え冷えとしたものを秘めてはいるが、雨脚も柔らかく明るさがある。晴れ際などにきらきらと輝いて降るさまは美しい。
作者は心を込めて手紙を書き上げ、ポストへと向かわれる。道端の草木の匂い、四方の山々の景などに心を弾ませながらゆっくりと歩を運ばれたのではないだろうか。
寒さも漸く底が見えてきたこの季節のよろこびは格別のものがある。
掲句は「春時雨」で切れ、中七・下五の「かしこと括り投函す」を深くしている。上下の取り合わせはひびき合い、読む者の胸に迫る。何か新鮮で、余情のふくらむ一句である。
平成28年の俳誌「駒草」6月号に掲載。
(関 三穂子)春時雨かしこと括り投函す
蓬田紀枝子
社団法人俳人協会 俳句文学館550号より