俳句カレンダー鑑賞  平成29年2月

俳句カレンダー鑑賞 2月
観音の胎内にゐて初音聞く 柏原眠雨

 鶯の鳴き声を聞くと春がきたことを実感する。
  この年、作者が初めてその声を聞いたのは観音の胎内という意外な所であった。神聖な気持ちで大観音の胎内に入り、狭い螺旋状の階段を上っていると、突然外で鶯が鳴いた。しかもそれは今年初めて聞く鶯の声。旅立ちの季節になったので、胎内から出てくるよう促しているかのようだ。
 胎内という言葉からは生命の誕生を連想させ、大観音から出てきた時には生まれ変わっていて、新たな素晴らしい未来が待っていることを予感させるようである。
  自註現代俳句シリーズの『柏原眠雨集』(俳人協会)によると、この観音は宮城県の船岡城址山頂に立つ白衣観音。ここは桜の名所で、桜の季節には山頂までスロープカーも運行され、大勢の人で賑わう。(佐々木潤子)
観音の胎内にゐて初音聞く

柏原眠雨

 社団法人俳人協会 俳句文学館550号より